カテゴリー  
コラム(199)
お客様の声(106)

ホームページへ戻る
解禁話シリーズ
古美術商に来る人って、どんな人?

と、よ〜く町中で聞かれます。

どんな人って・・・色々おりますがな。

少なくとも、そんな質問をする方は御来店されませんがね。

当店での記憶に残る、お客様 NO 

*九谷の爺ちゃん


開店間もない頃、毎朝てけてけてんてんて〜と登場する方がおりました。
老人らしく杖をつき、腰が前に曲がったお爺ちゃん。

入れ歯が眩しい程の笑みを称える方です。

第二次世界大戦を乗り越えた方です。

その方は、常に漢字をテーマに話を進めます。

色々な事を教わりました。

「先生は『親切』とは、なぜ、親を切るか御存知ですか?」

先生とは私の事で、何故か先生と呼ばれておりました。

親切。さて、皆様もお考えになられてみて下さい。


話を戻しまして。
何故、毎朝、出勤のように訪れて下さっていたかと申しますと、当時、店には九谷の徳利がございまして、どうやら、その九谷を眺めに来ている御様子でした。

一通り話し終えると、その九谷の徳利を眺めては
「私が若かったら、すぐにでも欲しい代物です」

(ですので、九谷の爺ちゃんと呼んでおります)

御年齢は、当時で90代です。


九谷の徳利を毎朝、繁々と見つめては
「それでは、また明日、お目にかかりましょう」


店主の本音。
(この徳利、売っちゃったらショック死するな…)


そんな事が結構、長い間続きました。

相変わらず鎮座する九谷の徳利でしたが、ある日、店の表のウィンドウに出してみました。


すると、開店の10時を回っても、九谷の爺ちゃんが来ない…。。。

なにせ、毎日の日課でしたので、心配になり表に出てみましたら、そこには杖をついた爺ちゃんが立っておられます。

「いかがされましたか?」

と声をかけました所

「先生…」

今にでも泣き出しそうなお顔で、ウィンドウにある九谷の徳利を御覧になられておりました。

「あ、そちらの徳利ですか」

と、ニコニコしてましたら

爺ちゃん一言

『私に店に入るな!と言う教えでございましょうか?』





んーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!



捻るね。捻るね。この御年代の諸先輩方は!



あわあわしている九谷の爺ちゃんに


「そのような頓知のきいた事は致しません」


この時の顔。。。


にっかー☆551.gifと笑うのです。


忘れもしません。


その日の漢字のテーマ。


『希』について。。。



まれまれまれまれまれまれまれまれまれまれまれまれまれの連発。


どうやら、希で「のぞみ」と読むのが気に入らなかったらしく、永遠、お話されておりました。



虐めた訳じゃ〜ないのに、説教されました。





数ヶ月後。




九谷の爺ちゃんが御来店する日数が減ってきました。



段々と、そのペースは落ちていきまして、気がつきますと、全く御来店されない数ヶ月が過ぎました。




う〜ん。まさかの、まさかか・・・・・。




お名刺は頂いておりました。

若い頃のお写真まで拝見させて頂いておりました。

剣術の道を貫いた経歴の持主である事も知っておりました。


あと数日、お姿がみられないようでしたら、お電話を入れてみようかと考えていた矢先の出来事です。




「すみません…○○と申します」



と、御夫婦が御来店されました。


お名前を告げられてもピンっとこなかったのですが


「○○○○○の息子です」


・・・・・・!

「あー!○○さんの?」





九谷の爺ちゃんの息子さん御夫婦でございました。






安心してお読み下さい。

悲しい方向へは持っていかないのが、希です。









「実は…」


じつは・・・・、何?何?な〜に〜?と、心の叫び。




「実はですね。オヤジが入院しまして、どーーーしても「のぞみに行きたい」と毎日言うんです」




ほっほー。入院でしたか(安堵)




「で、ですね。僕たちは、どこのスナックに引っかかったのかと家族会議が行われましてね。。。いや〜、まさか、あの武道しか興味のないオヤジから「のぞみ」と言われましてね」






いやはや。これは、これは。





「んまー。そんな具合で、本日、場所を聞いてお邪魔した訳なんですがね。スナックじゃなくて『古美術』と看板を見て、ホッとしました」





ほうほう。






「それでですね。あのですね。。。」


と、振り向き、店の前に停めてあるお車の方を見る御夫婦。




私も、そちらに目をやると






にっか〜☆551.gif






と、入れ歯眩しい九谷爺ちゃんの蔓延の笑み。







うわ・・・・・・・。←店主



「オヤジ、入るか?」



息子さんに車椅子に乗せられ、九谷爺ちゃん、希に上陸。





息子さんの妻が一言


「お義父さん!」





・・・・なに、この感動の渦。。。。←店主




「オヤジー!」




オロオロオロオロ・・・・・←店主(当時28~29歳)













『オヤジー!スナックじゃ〜なくて、良かった〜☆』




















あ〜あ。



なんでしょか。




この再会。












九谷の爺ちゃんのリクエスト



「見たいものがある・・・」










「オヤジ、なんだ?」

「お義父さん」





呆気←店主








この運びからして、九谷の徳利と思いますでしょ?






ちが〜うの。



さすがなの。







「鎌倉時代の太刀が、この店にある。それを拝見したく詣った!せんせい!」




詣った?私も、参っただよ。。。。しぇんしぇ〜






刀を抜く、九谷爺ちゃん。




その時、はじめて、現役の姿を見ました。








曲がった腰が、背筋ピーン↑







店を立ち上げてから、この方程、素晴らしいお姿にお会いした事はございません。







「・・・・・・」




無言の数秒。



九谷爺ちゃん、すっごくカッコイイ。





白鞘に刃を戻すと




「は〜」へなへなへなへな〜←九谷爺ちゃん








店から出る時には、車椅子にガックリ凭れて退店。












あい、かわらず。



年賀状を頂いております。





刀剣のお客様では、一番、尊敬している方でございます。








希で、インパクトな、お客様でございます。





ちなみに、こちらが、その九谷の徳利です。


552.gif