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ロマンでございます
タイトルから「店主ついに頭イカれたか!?」と御思いでしょうか。
失礼致しました。

高倉健様を敬愛している私はロマン等と言う言葉は、健さん以外に似合わない!と時折冗談交じりに申しております事を店主と長いお付き合いの方でしたら御存知のはず・・・。

そんな、他愛も無い会話が飛び交う店内の出来事をお話致します。


うだる暑さの中、店先におりましたら、常連様(!?)の○○さんが御来店。

お年も70…いや、80代は迎えられたでしょうか。
当店で買い物をされた事はございませんでしたが骨董好きは伝わる方でして話の内容も戦時中の事や骨董談議に及び、学ぶ所が多々有。
煙たがる事もなく、すんなりと話を聞き入れておりました。
かれこれ4年の、お付き合いとなりましたが、『暑いね〜』と額をハンカチで拭きながら、なんとも紳士なお姿で御来店。

その日は、○○さんとの会話の中からリサーチした商品を御用意させて頂いておりました。

商品を○○さんにお渡しすると
『この年になると、こ〜いう物は…ね〜。我々は先が短いし…』
と笑っておられましたが、私には確信がございました。

暑さも納まる頃に再び御来店頂けるだろうと考え商品を店の奥に保管しておりました。

8月最終日の猛暑の中、再び御来店された○○さん。
一服して頂く為に差し出したレモン水を口に含むと、なんとも渋い表情となり
「あれを、もう一度拝見させてもらえるかい?」

奥のほうから商品を出しますと、○○さんは、立て続けにケチを付け始めました。

このような事を申し上げて良いものか迷いましたが、ここで記載させて頂きます。

骨董好きと対面しておりますと商品にケチを付け始めましたら、それは時折「欲しい」の合図でもあります。
細かな所まで細かな言葉で俗に言う「ケチ」を付けます。

私の場合は、一通り、その内容をお聞き致します。
次に頂く言葉を知るからこそ黙っていられます。

一通り「ケチ」を言い尽くしますと、表情は柔らかくなり真っ直ぐとお顔をこちらに向けます。
口元がゆがみ、一言が発せられます。

「で、いくらになるんだい?」

ここまで申し上げて頂きましたら、後は、私のほうが「お勉強」させて頂くのみとなります。

古美術・骨董の醍醐味は、店主とのやり取りにあると申し上げる方も多いのですが、これも、長年培われてきた古美術商の内側と感じております。

○○さんは、戦前の古美術・骨董品の価格のお話もされます。

「当時は○銭で買えた」

お話されている時の目元は懐かしさを含む笑みを浮かべており、会話の内容は金銭に関する事柄ですが、なんとなく、こちらまで気持ちが柔らかくなる思い出話でございます。

後は、こちらの価格次第・・・とまでなりますと、今後も、お付き合いさせて頂きたい『額』を提示致します。

「よし!買いましょう!」

と、現金を懐から出され、私に丁寧に手渡されます。

頭を垂れ、感謝申し上げますと、○○さんが申し上げました。

「この年で買ったよ」


私が、何故に、○○さんとのやり取りを、こちらに記載するか、もう少しスマートにお伝え致します。


○○さんは以前から御来店頂くたびに、御自身には記憶はないと思いますが、それは潜在意識から出る言葉であろう一言がございました。

『もう一度、あれを持ってみたいな〜』

戦後まもなくは、色々な物を収集されておられた御様子でしたが、ここではお伝え出来ませんが、事情により手放す事を繰り返す事により、手元には数点程の気に入った物を所有されているのが現状でした。


話は少し反れますが、所有したい、買いたい、持ちたいと言う、いわば『欲』は、健全でなくては持てぬ欲だと感じております。

欲が、欲に留まらず、古美術・骨董品とは受継ぐ、継承するに価する自身になろうと言う責任をも考えはじめ、人の人生を映す思想も持ち得ているように感じます。

じきに儲かる等とお考えになられている方ほど、行く末は金銭的にも気持ちとしても損をする仕組みかと。

人間、死ぬ間際まで儲けを考える愚かな方はおられないと思いませんか?

生きている今、所有する事の心の弾む喜びを噛み締め、大切にする日々の継続。


また所有したいと小言のように発せられ、早4年目にして初めてのお買い上げ。
そこに喜びは互いにあったと感じます。

さて、ここで、何故「売る」のか。
古美術品・骨董品は、身銭を切って「買って」頂かない限り、所有された方は大切にしないものです。
よく、父から譲り受けた等と申し上げる方程、それを「売りたい」となります。
売る事は決して間違いでもなく、むしろ正当な価格で売買する事が大切なのですが、譲り受けた物を継続して所有する事を重んじている御家庭は減少にあります。
古美術品は、不思議な物で、いつの時代でも「欲しい」と申し上げる方がいる物であり、それが、本物と呼ばれるに等しい歴史を刻んでいるからかと思います。
身銭を叩いて購入された方は見惚れる日々の中で所有された方にしか味わえない喜びと達成感がございます。

また、難しい事を申し上げておりますかね?

単純なのですが。




○○さんの表情に『ロマン』を感じたもので記載させて頂きました。

きっと、今頃、集められた書斎を広げ、どのような物かと、昔と同じ事を御自宅でされておられる事と思います。


○○さんが、こちらをお読みになる事がございましたら、きっと

「くらだん!」

と、おっしゃると思いますが(苦笑)

口調は、飛切り厳しい方でございます。
何度も、めげそうになりましたけど

「あなたも精進しておられますな〜」

と、杖の柄を両手で握り顎に当てボソッと申されたのを、私は敢えて笑って俯きました。


人から人に動く「動産」
個々人の心が無ければ、終わってしまう古美術の世界。

面白がって暖簾を潜って頂ければ幸いです。


しかし、このような出来事が多い店でございます。

店主、神経質で観察されていてイヤだな〜と御思いかもしれません。

癖ですので、御了承願います。